鈴木密は、開発部の優秀な派遣エンジニアでした。

仕事も人格も完璧な密は、社員たちから頼られ、開発部はもはや密なしでは仕事が回らないほどとなっています。そんな密には、大きな秘密がありました。

2年前、鈴木優吾という開発部の社員が過労の末に自殺しました。密は、その優吾の妻だったのです。

密は優吾の周囲にいた社員たちのことを調べ上げ、別人になりすまし、会社に潜入することに成功しました。そして、優吾の弟・陽史と協力しながら、美しく冷酷な復讐を遂行していくのでした。

ターゲットとなるのは、次の５人です。

パワハラ課長の橋本

会社の創業者一族の人間で、優吾に仕事を押し付けていた古武

自分の仕事を優吾に巻き取ってもらっていながら、全く悪びれない女子社員の板橋

無能ゆえ開発部の予算をカットし、優吾へのしわ寄せを発生させた社長

優吾が浮気相手だと嘘をつき、自分の彼氏をけしかけ暴行を加えさせた佐伯

最初のターゲットは、課長の橋本。
橋本は部下に無茶を言っては反省文を強要する、横暴なパワハラ上司でした。優吾を自殺に追いやった人間のうちのひとりであることは明確です。上司である橋本に、開発部の社員は誰も逆らえません。

しかし、橋本に正面から反抗する社員がひとりだけいました。かつての優吾の部下、斎藤です。橋本は優吾の死を事故だと言い切りますが、斎藤は橋本が殺したと言い、同僚だった自分にも責任があると思っています。

密は、橋本と身体の関係をもち、心酔させ、橋本の飲料に微量の毒を盛り続けました。

やがて橋本は入院するようになりました。残された短い一生を病床で過ごし、毒を盛った密の名前をうわ言のように呟きながら死んでいくのでした。

次のターゲットとなったのが、古武。
古武は創業者の一族で、無能なエンジニアでした。断れば降格にすると優吾を脅し、自分の仕事を優吾に押し付けていたのです。

優吾の亡き後もまったく反省した様子がない古武。締め切り間近の仕事を斎藤に押し付けようとします。斎藤は断りきれず、密が助け舟を出し、2人で残業をして仕事を片付けます。

そんな中、急なトラブルが発生し古武は出張サポートへ出向くことになります。懲りずにサボろうとする古武ですが、到着した取引先で古武を迎え入れたのは変装した陽史でした。

陽史は密と相談し、古武を質素な部屋に閉じ込めます。会社では古武が音信不通となっていますが、誰も心配せず助けに行こうとする者もいませんでした。

次のターゲットは、女子社員の板橋です。
ミスの多い板橋は、いつしか仕事の出来る人間に自分の仕事を回すようになっていました。断れない性格の優吾に、責任を押し付け続けていたのです。

生前、珍しく仕事の愚痴を言う優吾を心配した密は、こっそりテープレコーダーを仕込んでいました。そこには優吾の体調を心配する板橋と、優吾に仕事を押し付けたくせにと説教する斎藤の会話が残されていました。

板橋は、優吾のいない今も、優しい性格の同僚に仕事を押し付けていました。
そんな板橋には、家の前にゴミを散乱させたり、愛猫の写真を同梱したホルモンを送りつけたりして、着々と復讐を行います。

怖い目にあった板橋は、すっかり密を頼るようになっていました。
密と板橋が2人で社員食堂にいると、社長とその取り巻きたちに遭遇します。社長は美人の密が気になる様子。

朝のランニングで偶然の再会を装い、誘惑をかけると社長はすぐさま密に堕ちました。

次のターゲットである社長は、先代の跡を継いだだけの能無し。開発部の予算がカットされたため、そのしわ寄せを優吾が受けていたのです。

密に夢中の社長は妊娠中の妻を放置し、少しずつ家庭が壊れていきます。

一方、密が社長と会っている間、密に頼りきりだった板橋は、重大な作業ミスをしてしまいます。取引先に一緒に謝罪に行ってくれた斎藤に、板橋は会社を辞めようと考えていると打ち明けます。

そこで、橋本課長と古武がひどい目にあったのは優吾を自殺に追い込んだからで次は自分なのではないかと、俯くのでした。

最後のターゲットである佐伯は、その性格とやり口で複数の人間から恨みを買っていました。
優吾が浮気相手だと嘘をついた佐伯に対しては、結婚式をぶち壊すことにしました。

結婚式の会場で、友人からのサプライズと称して巨大スクリーンに映し出されたのは、佐伯と新郎ではない男との淫らな映像。

当然そのまま婚約は破棄となりました。この一連の騒動は、佐伯に恨みをもつ女性と密、そして陽史の共謀でした。

佐伯の結婚式に招待された密と斎藤は、一緒に参列していました。佐伯への粛清を終えた密は、自分が優吾の妻であることを斎藤に告げました。

驚いた斎藤は、去ろうとする密を引き留め、なぜ自分のことは見逃すのか問いました。

「それがあなたに対する罰だと言ったら？」

密はそう答えて、美しい笑顔で振り返りました。

斎藤は密を抱きながら、「俺の全てを捧げるよ…」と囁くように密に告げました。
密は、そんな斎藤の愛を一身に受け止めるのでした。

果たして、密の復讐はこれで終わりを遂げたのでしょうか？
続きはぜひ本編をご覧ください。

美しい未亡人。
優吾を自殺に追いやった会社に復讐するために、美月から密に名前を変えて派遣社員として働いている。

密の夫。
頼まれると断れない優しい性格。エンジニアが夢だったが、過労で自殺してしまう。

優吾の後輩で、誰にでもハッキリものを言う性格。
優吾の死に責任を感じている。一緒に仕事をするうちに密に好意を寄せるようになる。

この作品は、読むと溜まったストレスを発散させるようなスカッとした快感を味わえます。

復讐のターゲットになる人間はクズで同情の余地はなく、密が下す冷酷な仕打ちが清々しいほどです。

優吾の死を軽視していた同僚たちが痛い目にあったあと、どのように変わるのかも見ものです。

また、優吾との過去や義母との関係性も気になるところ。密の冷静で妖艶な人物像がどのようにして形成されていったのか、注目したいポイントです。

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