もう、あの頃には戻れない……かつての仲間たちと自分の道の間で揺れ動くサスペンスドラマ『復讐の毒鼓3』
大人気シリーズ3作目は「それぞれの道」を描いたサスペンスドラマ。
かつて毎日のように一緒につるんでいた不良仲間も、気づけばみんな自分の道を歩き出し、会うこともほとんどなくなっていた。
今作は「毒鼓」こと神山勇の仲間で、かつて「雷神」と呼ばれていた不良・雷藤仁を中心に物語が展開する。
大雨が降るなか車を運転して帰っていく彼女を見送ったあと、仁はたとえ間違いでも歩み続けるしかないと覚悟を決める。
その表情には昔見せていた余裕などない。
いったい、何が彼をここまで追い詰めているのか。
その原因は少し前にさかのぼる。
ここはとある街の裏路地。何人かのホームレスが道の脇に居座っている。
通りがかりの男に突然話しかけるホームレス。驚いた男性は逃げていってしまった。
電話をかけることができず落胆するホームレス。その顔をよく見てみると
雷藤仁であった。一枚の名刺を手にして見つめている。
そこには彼の高校の先輩の連絡先が書かれていた。
次に通りかかった人から携帯を借りることができた仁は、先輩に電話をかける。
そして電話越しで仁は先輩に助けを求めるのであった。
ここはいわゆるヤクザの事務所。仁が助けを求めたのは暴力団の先輩であった。お金がなくホームレス生活を余儀なくされていた仁は、路上生活を抜け出すために暴力団に入ることを決意する。
そう言って差し出してきた先輩ヤクザの手を、彼は両手で包んで握り返した。
その時の彼には、選択肢という選択肢がほぼなかった。
路上生活をしていたときからすでに昔の仲間と連絡を取っていなかったので、自身の現状を伝えられず助けてもらうこともなかった。迷惑をかけられないという思いやプライドもあったのだろう。戸惑いもあったが、こうして彼はヤクザになった。
そして1週間後、
仁は紙袋を下げてとある飲食店へやってきた。この日は昔の仲間である神山勇の誕生日会であった。
昔の仲間が集まっているのを確認し近づく。今日の主役もすでに着席していた。
到着早々、勇に誕生日プレゼントを渡す仁。黒いスーツにはだけたYシャツ、高級時計を身に付けたそのファッションに驚く仲間たち。多少の違和感を覚えながらも久しぶりの会合に沸くメンバーだった。
しかし、その後仁の放った一言で場は一変する。
これにはかつての仲間たちも違和感しか覚えなかった。やけに乱暴な言い方である。
その後も仁は仲間たちに対して見栄を張るような話しばかりした。
自分がちゃんとしていて立派な存在に見えるように、勇たちに対してやや上から目線な話し方をしていた。これには勇たちも次第にモヤモヤし出す。しまいには先輩に呼び出されて先に帰る際、会合のお代をすべて自分一人で支払っていってしまった。
この時、彼らはまだ仁がここからどんどん転がり落ちていくことを知らなかった。
ただ昔の仲間がちょっとおかしくなっただけ。もしかしたら調子が良くなかっただけかもしれない。誰も深く気に留めようとはしていなかった。
一方の仁も、この時はまだここから先に待ち構えている出来事を知る由もない。
お金のためにカタギの道を捨て、また昔の仲間と共に歩く道さえも捨てようとしている彼の人生は今後どうなってしまうのか。悲しい男の転落劇の結末を確認してみてはいかがだろうか。
©Meen & Baekdoo/ Toyou's Dream